私が昔、遺伝子検査を受けなかった理由

乳がん
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母が若くして乳がんになり、初回の手術から10年も経って遠隔転移して亡くなったので、BRCA1とBRCA2の遺伝子が遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関係することは20年近く前から知っていました。遺伝子検査を受けたらどうかと勧める方もいましたが、私は受けようとは思いませんでした。自由診療だったこともありますが、高いお金を払っても何の利点もないと考えたからです。変異があるにしろ、ないにしろ、やることは一緒です。つまり、毎年、エコーとマンモグラフィーで乳がん検診を受けることです。乳がん検診としての自治体の補助があるマンモグラフィーは40歳からです。しかし、私は20代から、自費で検診を受けてきました。今でも乳がんや卵巣がんになっていない方が遺伝子変異を持っていても、保険診療として検診などのサーベイランスやリスク低減手術を受けることはできません(2025年現在)。

遺伝子検査を受けることは、妹に伝えました。もし、私に変異があったとしたら、そして、もし、それが母から受け継いだものだとしたら、妹にも1/2の確率で変異がある可能性があります。妹にはこの事実を説明しましたが、果たして発症していない妹も、私がHBOCであった場合に検査を受ける必要があるのだろうか?

発病前に遺伝子検査を受けるかどうか

過去の私は検査を受けない選択をしました。お金だけの問題ではありませんでした。変異があっても、なくても、やれることは毎年エコーとマンモグラフィーの乳がん検診を受けること。それならば、わざわざ遺伝子変異があるかどうかを調べる必要があるでしょうか? また、変異がある場合、乳がんの罹患確率はかなり高くなりますが、必ず発症するわけではありません。細胞は、何重にもDNA修復機構や異常の排除機構が張り巡らされており、簡単には癌細胞の誕生、そして増幅を許しません。それならば、自分には遺伝子変異はない、罹患しないと信じて生き、しかし、それでも万が一の時のために毎年検診を受けた方が前向きな人生ではないでしょうか? 特に結婚前の場合は、子供に遺伝子が1/2の確率で引き継がれることを忘れるわけにはいきません。結果として、私は子供には恵まれませんでした。

もちろん、遺伝子異常があることがわかっていれば、手術の術式などの選択に役に立つかも知れません。しかし、最近はどこの病院でも診断から手術まで待ち時間があるようなので、診断がついてすぐでも間に合うのではないか、という気がします。ただ、もし将来に、乳がんや卵巣がんになっていない遺伝子変異の保持者が、保険診療として検診などのサーベイランスやリスク低減手術を受けることができるようになれば、受ける価値があるかも知れない、とも思います。そして、今、健康な方に、どこまで治療をするのかは、論理面でも国の財政面でも、難しい問題があると思います。

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